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転籍と出向の違い:従業員への影響と注意点

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2025.09.04
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1. はじめに

 M&Aや事業再編が行われるとき、従業員の雇用や配置は経営者にとって最大の関心事の一つです。特に、買収後の組織統合では「転籍」や「出向」といった形で従業員の勤務先が変わるケースが出てきます。しかし、この2つの制度は似ているようで大きな違いがあり、従業員への影響も異なります。違いを理解せずに進めると、従業員の不安やトラブルにつながりかねません。


2. 転籍と出向の基本的な違い

(1) 転籍(在籍出向ではない「完全転籍」)

雇用契約が移る:従業員は元の会社との雇用契約を終了し、新しい会社と新たに雇用契約を結ぶ。
籍が完全に移る:給与や福利厚生、就業規則などは転籍先の会社のルールが適用される。
合意が必要:労働契約法の観点からも、従業員本人の同意が前提。会社の一方的な命令で行うことはできない。

(2) 出向

雇用契約は維持される:従業員は元の会社に在籍したまま、一定期間、別の会社で勤務する。
給与の扱い:出向元と出向先の会社が分担して給与を支払う場合が多い。
戻ることが前提:出向期間が終われば原則として元の会社に戻る。

3. 従業員に与える影響

転籍の影響

メリット:新会社でのキャリア形成や成長のチャンス。
デメリット:従来の待遇や福利厚生が変わる可能性がある。退職金制度や企業年金が異なるケースも。

出向の影響

メリット:元の会社とのつながりを維持しつつ新しい環境を経験できる。
デメリット:二重の人事評価(出向元と先)が発生することがあり、処遇に不透明感が生じやすい。

4. M&Aにおける転籍・出向の使い分け

転籍が多いケース:事業譲渡型M&A(事業ごとに雇用を移す必要がある場合)
出向が多いケース:株式譲渡型M&A(会社は存続するが、一時的に人材交流や統合準備をする場合)

 例えば、ある製造部門だけを事業譲渡した場合、従業員は譲渡先企業に「転籍」する必要があります。一方、買収後に統合を進める段階で、キーパーソンを出向させて橋渡し役を担わせるといった使い方も一般的です。


5. 注意すべきポイント

(1) 本人同意の重要性

 転籍は労働契約の変更を伴うため、従業員本人の同意がなければ成立しません。合意形成のために、経営者は十分な説明責任を果たす必要があります。

(2) 処遇・待遇の透明化

 出向の場合も転籍の場合も、給与水準、昇給・賞与の基準、退職金制度などを明確に伝えることが不可欠です。曖昧な説明は従業員の不安や不信感につながります。

(3) コミュニケーションの徹底

 M&Aに伴う転籍・出向は従業員にとって大きなライフイベントです。経営者は「なぜ必要なのか」「どのようなメリットがあるのか」を丁寧に説明し、信頼関係を維持することが重要です。


6. まとめ

 M&Aにおいて「転籍」と「出向」は、いずれも人材をつなぐ重要な仕組みですが、その本質は異なります。

●転籍:雇用関係そのものを移す

●出向:雇用関係は残したまま別会社で勤務する

 従業員への影響は大きいため、企業は制度の違いを理解し、本人同意・待遇説明・透明性の確保を徹底する必要があります。

 M&Aの成功は数字やシナジー効果だけでなく、「人をどう守り、どう活かすか」に大きく左右されます。転籍や出向を適切に使い分けることで、従業員の安心とモチベーションを維持し、統合後の組織の一体感を高めることができるのです。

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