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災害リスクと地域企業M&Aの関係

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2025.10.29
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―地域経済の持続性を守るための新しい事業承継戦略―

 日本は世界有数の「自然災害大国」と言われます。地震、豪雨、洪水、台風、土砂災害、火山噴火――。
 これらの災害は、地域企業の経営を一瞬で脅かし、地域全体の雇用と経済活動に長期的な影響を与えます。
 特に地方の中小企業では、経営資源の集中・事業継続計画(BCP)不足・後継者不在といった要素が重なり、災害時のリスクが一層大きくなります。

 本稿では、「災害リスク」と「M&A(企業の統合・承継)」がどのように関係しているのか、そして中小企業が地域の中で持続的に生き残るためにどのような戦略をとるべきかを詳しく見ていきます。


第1章 災害リスクが中小企業に与える実際の影響

1. 直接的被害:設備・拠点の損壊

 中小企業は多くの場合、地元の一地域に生産・物流・販売拠点を集中させています。
 そのため、地震や浸水によって生産ラインが停止したり、在庫や機械が損壊するだけで、経営が立ち行かなくなることもあります。
 特に製造業や建設業では、代替拠点を持たないケースが多く、復旧に時間と費用を要します。

2. 間接的被害:サプライチェーンの寸断

 災害によって取引先や仕入れ先が被災する場合、自社が直接被災していなくても事業停止に追い込まれることがあります。
 また、物流網の遮断により製品供給が滞ることで、顧客離れや契約解除が起こることもあります。

3. 人的被害・人材流出

 災害後には従業員の生活環境が一変します。住宅の被害や避難生活の影響で離職するケースもあり、人的資産の喪失が経営の大きな痛手となります。
 地域全体の人口流出が進むと、長期的な人材確保にも影響します。


第2章 災害に弱い中小企業構造と事業承継リスク

 災害リスクは「経営資源の分散ができていない」中小企業にとって、極めて致命的です。
 その背景には、次のような構造的な課題があります。

1. 経営の属人化

 地方の企業では、「経営者=意思決定者=現場監督」という構造が多く見られます。
 経営者が災害で不在となれば、事業判断が止まり、取引・支払い・従業員対応すらできないことがあります。

2. 後継者不在問題

 災害によって工場や事務所が被災した際、「もう立て直す力がない」と廃業を選ぶ経営者も少なくありません。
 実際に、被災地域では廃業率が他地域より高い傾向があり、事業承継がなされないまま地域の産業基盤が失われていく現実があります。

3. 地域集中リスク

 地域経済は同業・取引関係が密接に結びついているため、ひとつの企業の倒産が他企業にも波及する「連鎖倒産」リスクが高まります。
 そのため、個々の企業だけでなく、地域全体の経営基盤をどう守るかが重要な課題です。


第3章 M&Aを通じた災害リスク分散の可能性

 こうした中で、M&A(企業の統合・譲渡)を災害対策の一環として活用する動きが広がりつつあります。
 単なる経営権の移転にとどまらず、「災害リスクを分散する経営戦略」としてのM&Aが注目されています。

1. 地理的分散によるリスク軽減

 たとえば、沿岸地域の企業が内陸部の企業と統合することで、災害時の代替生産や物流の確保が可能になります。
 逆に、内陸企業が港湾地域の会社を買収し、複数拠点での供給体制を構築するケースもあります。

2. 経営ノウハウ・BCP(事業継続計画)の共有

 M&Aによって経営が統合されると、買い手企業が持つ災害対応マニュアル・防災設備・リスクマネジメント体制を、売り手企業にも展開できます。
 特に製造・物流・建設業では、災害対応のスピードが業績に直結するため、組織力強化に繋がります。

3. 災害後の事業再生M&A

 災害でダメージを受けた企業が、同業他社や地域外の企業に事業を譲渡し、再生する事例もあります。
 たとえば、被災した食品加工会社が、別地域の同業者に設備とブランドを譲渡し、雇用を守りながら事業を継続したケースなどがあります。


第4章 自治体・金融機関・商工団体の役割

 災害リスクと地域M&Aの関係を考える上で、企業だけでなく地域支援機関の連携が欠かせません。

1. 自治体によるマッチング支援

 自治体が主導して、被災企業と支援企業のM&Aマッチングを行う例が増えています。
 例えば「地域産業連携支援センター」や「事業引継ぎ支援センター」が、被災企業の再生案件を取りまとめるケースがあります。

2. 地方銀行・信用金庫のネットワーク活用

 地域金融機関は、取引先の経営状況と地域の災害リスクを熟知しています。
 彼らが橋渡し役となることで、「地域を超えたM&A」や「連携再建型M&A」が円滑に進みます。

3. 中小企業診断士・商工会議所の支援

 中小企業診断士や商工団体は、BCP策定支援や事業再生計画の立案に強みを持ちます。
 M&Aの実行だけでなく、災害後の経営再建や人材確保まで一貫して支援する体制が求められます。


第5章 災害に強い地域経済をつくるために

 災害は避けられませんが、「備え」と「連携」によって被害を最小限に抑えることは可能です。
 M&Aを単なる経営戦略としてではなく、地域の持続可能性を高める“防災インフラ”として位置づける視点が、これからの地方経済には不可欠です。

●複数拠点・複数経営資源による分散経営

●災害リスクを考慮した企業間連携・事業承継

●自治体・金融機関・民間企業の三位一体の支援体制

●被災企業の早期再建を支える「M&A型復興モデル」

 こうした取り組みは、単なる企業の延命策ではなく、「地域の雇用・産業・暮らしを守る仕組み」そのものです。


第6章 まとめ:災害とM&Aの融合がもたらす新たな地域経営の形

 災害リスクが高まる現代において、M&Aはもはや経営の選択肢ではなく、地域を守るための「連携と共助のツール」です。
 個々の企業が孤立して災害に立ち向かうのではなく、M&Aを通じて資本・人材・ノウハウを共有し、地域全体で復元力(レジリエンス)を高めることが求められます。

 災害リスクを前提としたM&Aは、単に「企業の存続」ではなく、「地域の未来を支える投資」でもあります。
 今後、災害リスクを踏まえたM&A戦略の立案や、事業承継支援が、地方創生の中核を担う時代が訪れるでしょう。

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