想いを大切にするために―― 売り手経営者が知っておきたい「こだわり」と上手に向き合う方法
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はじめに:こだわりは、経営者としての誇りです
長年会社を経営してこられた皆さまにとって、自社には「数字では測れない価値」があるはずです。
・苦しい時代を乗り越えてきた歴史
・一緒に働いてきた従業員への感謝
・地域や取引先との信頼関係
こうした想いが強いほど、M&Aという選択肢に向き合う際、
「譲れない気持ち」が生まれるのは自然なことです。
本コラムでは、
その大切な想いを守りながら、円滑にM&Aを進めるためのヒントをお伝えします。
第1章:なぜ「こだわり」が強くなるのか
会社は、経営者の人生そのもの
中小企業の経営者にとって、会社は単なる事業体ではありません。
人生の大半を注ぎ込み、決断を重ね、守り育ててきた存在です。
だからこそ、
・「この会社の価値は、こんなものではない」
・「社員のことだけは守りたい」
・「最後まで責任を果たしたい」
と感じるのは、とても自然なことです。
大切なのは、
その想いをどう伝え、どう整理するかです。
第2章:善意のこだわりが、すれ違いを生むことも
① 価格への想いが強くなりすぎるとき
「ここまで育ててきた会社なのだから、このくらいの評価を受けたい」
そう思う気持ちは、決して間違いではありません。
ただ、M&Aの場では、
・市場環境
・将来のリスク
・買い手側の投資回収計画
といった視点も同時に考慮されます。
想いと評価の基準が異なることを理解しておくと、話し合いはぐっと前向きになります。
② 経営への関わりを残したい気持ち
「すぐに現場を離れるのは不安」
「社員から頼られたら応えたい」
そうしたお気持ちも自然です。
一方で、買い手は
・経営判断の明確さ
・責任の所在
を重視します。
どのような形で関与したいのかを整理して伝えることで、双方が安心できる形を見つけやすくなります。
③ 従業員を守りたい想いが強いとき
「全員の雇用を守ってほしい」
「待遇はできるだけ変えないでほしい」
これは売り手経営者なら誰もが願うことです。
ただし、将来にわたって事業を成長させるためには、一定の制度変更や役割調整が必要になる場合もあります。
短期的な安心と中長期の成長を分けて考えることが、結果的に従業員を守ることにつながります。
第3章:想いを“伝わる形”に変えるための工夫
1. 「絶対に譲れないこと」と「相談できること」を分ける
ご自身の希望を次のように整理してみてください。
・どうしても守りたいこと
・できれば叶えたいこと
・状況次第で調整できること
これだけで、交渉はずっと進めやすくなります。
2. なぜ大切なのかを言葉にする
「なぜそれが大切なのか」を説明できると、
買い手も真剣に耳を傾けてくれます。
・なぜ雇用条件を守りたいのか
・なぜこの価格を希望するのか
想いの背景を共有することが、信頼につながります。
3. 専門家を“味方”として活用する
M&Aの専門家は、
・交渉を急がせる存在ではありません。
売り手の気持ちを整理し、
・どう伝えれば誤解されないか
・どこに落としどころがあるかを一緒に考えるパートナーです。
遠慮なく本音を話すことで、結果としてより良い承継につながります。
おわりに:想いを次の世代へつなぐために
M&Aは、「会社を手放すこと」ではなく、「会社を次につなぐ選択」です。
こだわりや想いは、決して捨てる必要はありません。
大切なのは、
・整理し
・言葉にし
・相手と共有すること。
そうすることで、あなたの会社はあなたの想いとともに次のステージへ進んでいきます。
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