お電話でのお問い合わせ

06-7178-0457

【受付時間】9:00~18:00

お問い合わせ

住所:
〒541-0054
大阪府大阪市中央区南本町2-3-12 エッジ本町3階

アクセス:
地下鉄 堺筋線・中央線 / 堺筋本町駅 徒歩1分

見出しの画像

コラム

column

M&A後の人員整理リスクとその回避策

news

2025.09.02
  • お知らせ
  • コラム

1. はじめに

 中小企業のM&Aでは、事業承継や成長戦略の一環として買収・売却が行われます。しかし、M&A後に必ず話題にのぼるのが「従業員の雇用・処遇」です。買い手にとっては人材を獲得することが大きな目的である一方、シナジー追求や効率化を理由に「人員整理(リストラ)」が課題となることも少なくありません。
 人員整理は従業員の生活に直結するだけでなく、買収企業のブランド・評判、従業員のモチベーション、事業の継続性にも重大な影響を及ぼします。したがって、M&Aにおける人員整理リスクを正しく理解し、適切に回避・軽減することが成功への鍵となります。


2. M&A後に生じやすい人員整理リスクの実態

(1) 重複人員の発生

 M&Aでは、管理部門や間接部門で業務が重複するケースが多発します。特に経理・人事・総務・情報システムなどは統合の過程で「人が余る」と判断されやすく、人員整理の対象となりがちです。

(2) 文化の違いによる摩擦

 買収企業と被買収企業では企業文化が異なることが多く、価値観や働き方の違いから従業員の不満や離職が増えることがあります。これが「見えない人員整理」につながり、優秀な人材の流出リスクを高めます。

(3) 経営方針の転換

 M&A後に買い手が戦略を大きく転換すると、従来の事業に従事していた従業員が「不要」とされるケースがあります。例えば、地方の製造業を買収後、事業ポートフォリオの整理により一部工場を閉鎖する、といった事例です。

(4) 財務的な圧力

 M&Aにより買い手が多額の資金を投入した場合、早期に収益改善を求めるあまりコスト削減の一環として人員整理を進めるリスクがあります。


3. 人員整理リスクがもたらす悪影響

従業員の士気低下:残された従業員も不安を抱き、生産性が落ちる。
優秀人材の流出:特に中核社員や現場を支えるベテランが辞めると事業への影響が大きい。
取引先や顧客への不安波及:大量退職のニュースは信用低下につながる。
地域社会からの批判:地方企業の場合、「雇用を守る」という社会的責任が問われる。

4. 人員整理リスクを回避するための実務的ポイント

(1) 事前のデューデリジェンスでの確認

 M&Aを進める際には、財務や法務だけでなく「人材デューデリジェンス」が重要です。

人員構成(年齢・勤続年数・スキル)
雇用契約や就業規則
労使関係や組合の有無
重要人材(キーパーソン)の特定

 これらを事前に把握することで、「統合後に人員整理が不可避」といったリスクを予測できます。

(2) PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)の計画策定

 M&Aは契約締結がゴールではなく、その後の統合作業が成功の分かれ目です。PMI段階で以下を明確にしておくことが必要です。

どの部門を統合し、どの部門を維持するか
重複人員を配置転換できるポジションはあるか
人事制度や給与体系をどのように統合するか

 従業員に早期に情報を開示し、不安を払拭することが重要です。

(3) 配置転換・再教育による雇用維持

 「人が余る」と判断されたとしても、必ずしも解雇に直結するわけではありません。

グループ内の他事業部門への異動
新規事業や成長分野への配置転換
OJTや研修によるスキル再教育

 といった方法で、従業員の雇用を維持しながらシナジーを追求することが可能です。

(4) コミュニケーションの徹底

 人員整理のリスクは「不透明さ」が大きな引き金になります。
 経営陣が従業員へ

M&Aの目的
今後の事業方針
雇用や処遇に関する基本方針

 を明確に説明することで、無用な不安や退職を防ぐことができます。

(5) 顧問専門家との連携

 M&A後の人事対応は、労務管理や法令遵守の観点でも注意が必要です。社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家と連携し、リスクを最小化する仕組みを整えることが望まれます。


5. 成功事例と失敗事例の対比

成功事例:製造業の買収後、管理部門が重複したが、余剰人員をグループ内の物流子会社に配置転換し、雇用を維持。従業員の安心感が高まり、買収後の生産性も向上した。
失敗事例:小売業を買収後に一方的な店舗閉鎖を実施。大量の人員削減が生じ、地域メディアで批判を浴び、売上にも悪影響が出た。

6. まとめ

 M&A後の人員整理リスクは、単なるコスト問題にとどまらず、企業の成長・ブランド・信用に直結する重要な課題です。

事前の人材調査
PMI計画での配置転換策
従業員との丁寧なコミュニケーション
専門家との連携

 これらを通じて「人を守り、企業を育てるM&A」を実現することが、買い手・売り手・従業員の三者にとって最も望ましい未来につながります。

弊社へのご相談につきましては問い合わせフォームよりお問合せ下さい

RECOMMENDおすすめ記事