お電話でのお問い合わせ

06-7178-0457

【受付時間】9:00~18:00

お問い合わせ

住所:
〒541-0054
大阪府大阪市中央区南本町2-3-12 エッジ本町3階

アクセス:
地下鉄 堺筋線・中央線 / 堺筋本町駅 徒歩1分

見出しの画像

コラム

column

中小企業M&Aにおける簿外債務とそのリスク

news

2025.09.08
  • お知らせ
  • コラム

1. はじめに

 M&Aにおいて「買収価格」や「シナジー効果」に目を奪われがちですが、実務上最も注意すべきリスクの一つが**簿外債務(オフバランス債務)**です。簿外債務とは、決算書や財務諸表に表れていない潜在的な負債や義務のことを指します。特に中小企業のM&Aでは、経理体制が十分に整っていないケースや、経営者の属人的な判断により簿外債務が生じている場合が多くあります。

 簿外債務の存在を見落としたままM&Aを進めると、買収後に想定外の支払いが発生し、資金繰りや経営計画に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。


2. 簿外債務の代表的な種類

(1) 未払い残業代・労務関連債務

中小企業では労務管理が不十分な場合があり、労働基準法に基づく残業代や割増賃金の未払いが簿外債務となることがあります。
買収後に従業員から請求を受け、想定外の多額支払いが発生するケースも少なくありません。

(2) 退職給付債務

就業規則や社内慣行に基づき、退職金の支払い義務がある場合でも、貸借対照表に計上されていないことがあります。
特に従業員が長期勤続している企業では潜在的債務が大きくなりがちです。

(3) 環境・設備関連の負債

工場や土地に環境汚染リスク(有害物質・土壌汚染など)がある場合、将来的な原状回復義務が簿外債務になり得ます。
中小製造業や不動産を保有する企業では注意が必要です。

(4) 未払い税金や社会保険料

税務調査で追徴課税を受ける可能性のあるケース、源泉所得税や社会保険料の未納なども簿外債務に含まれます。

(5) 保証債務・担保提供

経営者が個人保証している借入や、関連会社への連帯保証。M&Aにより承継されるケースがあり、想定外のリスクとなります。

3. 簿外債務が与える影響

買収価格の妥当性を損なう:見積もり以上の負債が発覚すれば「割高な買収」になる。
資金繰り悪化:突然の支払いにより運転資金が圧迫され、経営が不安定化する。
シナジー計画の崩壊:当初想定していた成長投資が簿外債務対応に吸収され、経営戦略が遅延。
訴訟・信用低下:労務や環境問題に起因する債務は訴訟に発展し、企業ブランドにダメージを与える。

4. 簿外債務を回避・軽減するためのポイント

(1) デューデリジェンスの徹底

財務DDだけでなく、労務DD・法務DD・税務DD・環境DDを実施することが望ましい。
中小企業の場合、帳簿だけでは見抜けないため、ヒアリングや現場調査も不可欠。

(2) 売り手企業の情報整理

売却準備段階で、未払い残業代や保証債務、退職金規程などを棚卸しして開示することが重要。
買い手との信頼関係構築につながり、トラブル防止にもなる。

(3) 契約でのリスク分担

表明保証条項(Reps & Warranties)や補償条項を活用し、簿外債務発覚時の責任を明確化する。
一部の買収契約ではエスクロー(代金の一部留保)を用いてリスクヘッジすることもある。

(4) 買収スキームの工夫

株式譲渡では債務を包括承継するため、簿外債務リスクが大きい。
事業譲渡スキームを選択すれば、不要な債務を引き継がない形で調整できる場合もある。

5. まとめ

 中小企業M&Aにおける簿外債務は、「見えない爆弾」とも言える存在です。表面上の財務諸表が健全であっても、潜在的な債務を抱えていれば、買収後に経営の足を引っ張る大きなリスクとなります。

売り手は事前に債務を棚卸しし、誠実に情報開示を行うこと
買い手はデューデリジェンスを徹底し、必要に応じて契約でリスクを分担すること
双方が透明性を高めることが、M&A成功のカギ

 中小企業にとってM&Aは事業承継や成長戦略の切り札となり得ますが、簿外債務を軽視するとその効果は大きく損なわれます。リスクを正しく理解し、準備と対応を重ねることが、M&Aを真の成功に導くポイントです。

弊社へのご相談につきましては問い合わせフォームよりお問合せ下さい。

RECOMMENDおすすめ記事