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従業員の処遇はどう変わる?給与・賞与・福利厚生の影響

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2025.08.29
  • コラム

1. はじめに

 中小企業のM&Aにおいて、経営者や買収企業が最も神経を使うテーマのひとつが「従業員の処遇」です。
 M&Aは企業のオーナーシップが移転する出来事であり、従業員からすれば「自分の給与は下がるのか」「賞与は続くのか」「福利厚生は維持されるのか」といった不安が生まれるのは当然です。

 処遇の変化は法律上の仕組みだけでなく、実務上の交渉や企業文化の違いによっても影響を受けます。本稿では、M&A後に従業員の処遇がどう変化するのかを整理し、注意点と対策を考えます。

2. 給与への影響

(1)原則は維持される

 株式譲渡の場合、法人格そのものは変わらないため、雇用契約はそのまま存続します。したがって、基本的には給与条件は引き継がれるのが原則です。

(2)変わる可能性のあるケース

事業譲渡の場合:従業員は譲渡先との新たな雇用契約を結ぶ必要があり、その際に給与水準が見直される場合があります。
買収側の人事制度に統合される場合:賃金体系や等級制度が異なると、給与水準の調整が行われることがあります。例えば、買収先が大手企業であれば昇給・昇格制度が整備され、むしろ給与アップが期待できる場合もあります。

(3)注意点

 給与の変更には労働契約法の規制があるため、従業員の同意なしに一方的に引き下げることは原則として困難です。実務では、統合後の人事制度を段階的に導入するなど、ソフトランディングが図られることが多いです。

3. 賞与への影響

(1)業績連動のため変動しやすい

 賞与は給与と異なり「会社の業績」や「経営方針」に左右されやすいため、M&Aの影響を受けやすい項目です。

買収側が賞与制度を重視している企業であれば、賞与額が安定または増額する可能性があります。
逆に、コスト削減を重視する企業であれば、賞与水準が抑えられることもあります。

(2)契約上の位置づけ

 就業規則や雇用契約で「賞与は業績によって支給される」と定められている場合、法律上は必ず支給しなければならないわけではありません。M&A後、買収側の方針で支給基準が変わるリスクがあります。

4. 福利厚生への影響

(1)制度の統一

 福利厚生は企業ごとの差が大きく、M&A後に最も変化が生じやすい分野です。

住宅手当、家族手当の有無
退職金制度の有無
社宅や社員食堂の利用可否
健康保険組合の違い

 買収側が大手企業であれば、福利厚生制度が充実しており、従業員にとってプラスとなるケースも多く見られます。

(2)負担感が増す場合も

 一方、中小企業独自の「アットホームな福利厚生」(社員旅行や祝い金など)が廃止されるケースもあります。そのため、一部の従業員にとっては制度改定がマイナスに映る可能性があります。

5. 実務での処遇変化のパターン

 実際のM&A現場では、以下のようなパターンがよく見られます。

1.処遇維持型
譲渡契約で「一定期間は給与・福利厚生を変更しない」と合意するケース。従業員の安心感が高まる。

2.段階的統合型
1〜2年かけて、買収先の人事制度に統一していくケース。最も現実的で、軋轢を抑えられる。

3.即時統合型
買収直後から新しい制度を導入するケース。効率は高いが、従業員の離職リスクも高い。

6. 経営者が取り組むべきこと

 M&Aで従業員の処遇を守るため、売却側経営者が事前にできることは多くあります。

譲渡契約に「雇用条件維持条項」を盛り込む
従業員代表や幹部に早期に説明し、不安を抑える
買収側企業の人事制度を事前に調査し、メリット・デメリットを共有する

 こうした取り組みは、従業員の定着率向上につながり、ひいてはM&A自体の成功にも直結します。

7. まとめ

 M&A後の従業員の処遇は、法律上は一定の保護が存在するものの、実務では「買収側の制度」と「従業員の納得感」によって大きく変わります。給与・賞与・福利厚生は従業員にとって最も生活に直結する要素であり、経営者がこの部分に十分配慮するか否かで、M&Aの成否が分かれるといっても過言ではありません。

 中小企業がM&Aを進める際には、財務や税務だけでなく、従業員処遇という「人的側面」を重視する姿勢が不可欠です。

【ご注意】

・本稿は一般的なM&A実務の傾向を整理したものであり、特定の案件に対する法的・労務的アドバイスを行うものではありません。実際の処遇変更に関しては、必ず弁護士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家にご相談ください。

・ご不明な点あればお気軽にお問合せ下さい。

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