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コラム

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2025年における中小企業のM&Aトレンドと今後の展望

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2025.05.01
  • コラム

事業承継・地域活性・成長戦略として進化する中小M&Aの現在地


1. はじめに:中小企業を取り巻く経営環境の急変

 2025年、中小企業を取り巻く経営環境はかつてないほどに変化している。少子高齢化の進行、人手不足、原材料価格の上昇、エネルギーコストの高騰、デジタル対応の遅れなど、複合的な経営課題が山積している一方、ポストコロナの経済再開、地域創生の強化、IT・AIの浸透など、成長のチャンスも数多く存在している。

 こうした背景のもと、中小企業においても「M&A」が従来のような一部の成長企業・後継者不在企業のものではなく、広範に活用される経営ツールへと変貌しつつある。以下では、2025年時点における中小企業のM&Aトレンドを、事業承継型と成長型の2つの観点から多角的に解説する。


2. 事業承継型M&Aの急速な拡大と深化

(1) 経営者の高齢化と後継者不在問題の深刻化

 中小企業庁のデータによると、国内の中小企業経営者の約60%が60歳以上を占めており、70代に入っても引退できないケースが増加している。子や親族による承継が難しくなる一方で、社内昇格やMBO(マネジメント・バイアウト)も現実的な選択肢となりにくく、第三者承継型M&Aが急速に広がっている。

(2) 地方企業への関心の高まり

 都市部だけでなく、地域で堅実に利益を上げる「隠れた優良企業」への買収ニーズが高まっている。地方銀行や信用金庫が仲介機能を強化することで、地域密着型のM&Aが急増。結果として、地域経済の維持や雇用確保にもつながる好循環が生まれつつある。

(3) 承継先の多様化

 以前は同業種の事業会社が中心だったが、近年では地域ファンド、個人投資家、さらには第二創業を目指す若手起業家による承継も増加。事業の継続性と革新性を両立する新たな「共創型承継」が注目されている。


3. 成長型M&A:中小企業の“攻め”の選択肢へ

(1) 小規模同士の「水平統合」型買収

 製造業、建設業、士業などで見られる、同業者同士の統合・連携型M&Aが増加している。営業基盤・人材の補完、顧客エリアの拡大、仕入れスケールの増強を目的とするもので、経営の安定化と効率化を同時に狙える手法である。

(2) 異業種連携による「第二の柱」形成

 既存事業が成熟期に入った企業が、新たな事業ドメインへの参入を図るケースが増えている。例として、製造業が物流やIT関連会社を買収しサプライチェーン全体を統合する、飲食業がテイクアウトアプリを買収して収益多角化するなど、柔軟な戦略が目立つ。

(3) デジタルシフト対応の買収需要

 多くの中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応しきれておらず、IT企業やDX支援企業の買収・資本提携を通じた「技術の取り込み」が積極化。IT企業の側から見ると、顧客基盤を獲得できる好機でもある。


4. 中小M&Aの支援インフラ拡充と市場の成熟化

(1) オンラインM&Aプラットフォームの普及

 ビズリーチ・サクシードやトランビなど、M&Aマッチングプラットフォームの台頭により、従来の仲介型に頼らず、自社で相手先を探索・比較・交渉できる時代に突入。情報の非対称性が緩和され、より多様なM&Aが成立している。

(2) 地域金融機関・士業の積極関与

 地方銀行、信用金庫、税理士、公認会計士、中小企業診断士などの専門家が、地元企業の支援を目的としてM&Aアドバイザー機能を果たす事例が増加。金融と専門知識を組み合わせた「地元密着型支援」が実現されている。

(3) 政府・自治体による後押し

 中小企業庁の「第三者承継支援総合パッケージ」や補助金施策により、M&Aコストを抑えつつ検討できる環境が整っている。自治体主導で承継支援センターを設立する例も登場しており、行政支援との連動が今後のカギを握る。


5. 今後の展望:中小企業におけるM&Aの“常識化”

 2025年以降、中小企業におけるM&Aは「特別な手段」から「当たり前の選択肢」へと定着する見通しである。以下のような展開が期待される。

 ・中小企業間M&A市場のさらなる拡大

 ・若手経営者や事業会社による積極的な買収参入

 ・後継者不在企業の「磨き上げ後M&A」の一般化

 ・M&A後のPMI支援サービスの需要拡大

 一方で、買い手と売り手の期待値のミスマッチや、専門家選定の失敗によるトラブルも見られるため、引き続き正確な情報収集と適切な助言体制の確保が成功のカギとなる。


6. おわりに:中小企業の持続的成長を支える「M&Aという選択」

 日本の経済・雇用・地域社会の根幹を担う中小企業。その持続可能性を高めるために、M&Aという手段は今や不可欠な経営判断となっている。単なる事業承継を超え、変化する市場への対応、組織の強靭化、新たな価値創造のために、「M&Aによる成長」は中小企業にとって最も柔軟で実効性の高い戦略と言える。

 今こそ、中小企業が自らの未来を「M&Aを通じて切り拓く」時代である。

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