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コラム

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M&Aか、内部成長か?中小企業の成長パターン比較

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2025.06.12
  • コラム

はじめに:中小企業の成長戦略は“選択”の時代へ

 人口減少、デジタル化、業界再編の進展など、経営環境が日々激しく変化するなかで、日本の中小企業はこれまで以上に「成長」について真剣に考えなければならないフェーズに入っています。特に、資源が限られる中小企業にとって、どのような方法で成長を実現するかは、経営の命運を左右する重要な意思決定となります。

 成長戦略には大きく分けて2つの手段があります。それが「内部成長(オーガニックグロース)」と「外部成長(M&Aによる非連続的成長)」です。本稿では、それぞれの特徴、メリット・デメリット、活用のポイントを詳しく比較し、中小企業が自社にとって最適な成長パターンを見極めるための視座を提供します。

第1章:内部成長とは何か――着実で“堅実”な拡大手法

内部成長の定義

 内部成長とは、自社の既存の経営資源を活用し、売上や利益、シェアを徐々に伸ばしていく成長パターンを指します。たとえば、新商品開発、自社ブランドの強化、営業拠点の拡充、人材育成、販路開拓などが代表例です。

メリット

経営文化・組織統合のリスクが少ない

自社の従業員・理念・プロセスの範囲内で進むため、摩擦が少なく安定した経営が可能です。

経営者のコントロールが効く

自社の戦略・計画に基づいて、進捗と改善を都度確認しながら進行できるため、統制がとりやすい。

投資リスクが比較的低い

徐々に投資を重ねていく「スモールスタート」が可能で、外部資金に頼らずに成長を模索できます。

デメリット

時間がかかる

人材育成、製品開発、市場開拓など、成果が出るまでに年単位の時間が必要となる場合が多い。

競合に後れを取るリスク

業界が急激に変化する場合、内部成長のスピードでは市場の変化に追いつけない可能性があります。

資源の限界がボトルネックに

人材・資本・ノウハウなど、すべて自社で抱え込むため、限られたリソースでは成長の上限が見えやすい。

第2章:M&Aによる外部成長――スピードと規模の「非連続的」成長

外部成長の定義

 M&A(合併・買収)を活用して、他社の経営資源や市場、ブランド、人材、技術などを一括で取得し、自社の成長に取り込む戦略です。新規市場参入、競合の買収、技術獲得、地域拡大などに用いられます。

メリット

即効性のある成長が可能

営業基盤や商品、人材を「一括」で取り込むことができ、数年かかる成長を一気に実現できます。

競争力の強化

競合企業や補完的な技術を持つ企業を取り込むことで、シェア拡大や差別化が可能です。

新規市場・事業へのスムーズな参入

ゼロから参入するよりも、現地に既に拠点・人材・顧客を持つ企業を買収することでリスクを軽減できます。

デメリット

PMI(統合プロセス)の難易度が高い

買収後の統合作業で文化摩擦、従業員の離反、システム統一などの課題が発生しやすい。

価格リスク・財務負担

高値掴みや想定外の簿外債務など、買収リスクが常に伴います。また、資金調達の負担も無視できません。

経営の透明性が求められる

外部からの監査やデューデリジェンスに対応するため、自社のガバナンス水準の底上げが求められます。

第3章:中小企業はどちらを選ぶべきか?意思決定の判断軸

1. 成長スピードのニーズ

 時間をかけてでも確実に育てたい場合は内部成長、一方、業界再編の波に乗って早急に市場シェアを取りたい場合はM&Aが有効です。

2. 経営資源の余力

 人材や資金に余裕があれば内部成長も可能ですが、資源が不足している場合はM&Aによって“外から補う”という考え方が有効になります。

3. 業界特性・競争環境

 IT・サービス業など変化の激しい業界ではスピード感あるM&Aが優位。一方、職人技術やブランドの熟成が強みとなる業界では内部成長の価値が高くなります。

4. 経営者のビジョンと姿勢

 長期的視野でじっくり育てたい経営者は内部成長を選びやすく、拡大意欲が強く、変革を恐れない経営者はM&Aを選ぶ傾向があります。

第4章:併用という選択肢――内部成長+M&Aのハイブリッド戦略

 成長の方法は「二者択一」ではありません。中長期的には内部成長を軸にしつつ、戦略的なポイントでM&Aを活用するという“ハイブリッド戦略”も現実的です。

 たとえば、自社の商品開発は自力で行いながらも、それを販売する営業会社をM&Aで取り込む、あるいは地域展開には内部投資で対応し、技術領域はM&Aで補完するなど、使い分けが重要になります。

おわりに:成長には「選択」と「準備」が不可欠

 中小企業にとって、「どう成長するか?」は、もはや偶然や流れに任せるものではありません。内部成長もM&Aも、それぞれにメリットとリスクがあります。大切なのは、自社の経営資源、事業のフェーズ、業界の動向、そして何より経営者自身の“成長への覚悟”を踏まえて、最適な手法を選び、実行することです。

 環境変化が激しい今だからこそ、中小企業は自らの未来を能動的に選び取る力が求められています。内部成長とM&A、それぞれの特徴を理解したうえで、最適な成長パスを描くことこそが、持続可能な企業価値向上への第一歩となるのです。

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