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M&A後の従業員の雇用は守られるのか?―法的保護と実務の違い

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2025.08.27
  • コラム

1. はじめに

 中小企業のM&Aにおいて、経営者や買い手が最も気にするテーマの一つが「従業員の雇用」です。経営者にとって長年共に働いてきた従業員は、単なる人材ではなく、家族のような存在でもあります。一方、従業員にとっても「M&A=自分の雇用がどうなるのか」という不安は切実です。
 法律上、従業員の雇用は一定の保護を受けていますが、実務の現場では必ずしも「全員の処遇が現状維持される」とは限りません。本稿では、法的保護の仕組みと、実務で起こり得る雇用への影響を整理します。

2. 法的保護の枠組み

 M&Aにおいて従業員の雇用がどう扱われるかは、「株式譲渡」か「事業譲渡」かで異なります。

2-1. 株式譲渡の場合

株主が交代するだけで、会社そのものは存続します。
従業員との雇用契約はそのまま維持され、法的には雇用関係は継続します。
就業規則、給与体系、福利厚生なども直ちに変わることはありません。

👉 したがって、従業員は形式的には雇用の安定が守られていると言えます。

2-2. 事業譲渡の場合

会社が事業の一部または全部を切り出し、別の会社に譲渡する形態です。
この場合、従業員の雇用契約は自動的には承継されません。
譲渡先に移る従業員は、個別の同意が必要です。

👉 この仕組みのため、事業譲渡では「誰が残るか・移るか」の調整が実務上の大きな課題になります。

2-3. 労働契約承継法

 会社分割の際には、「労働契約承継法」に基づき、原則として従業員の雇用契約が承継されます。
 ただし、例外的に対象外とされる従業員もいるため、会社側の事前整理が必要です。

3. 実務における「雇用の現実」

 法律的には保護が存在するものの、実際には次のような変化やリスクが起こります。

3-1. 処遇変更の可能性

買収後、給与体系や評価制度が見直されることがあります。
福利厚生が縮小されるケースもあり、「雇用は維持されたが待遇は変化」という現実があります。

3-2. 人員整理のリスク

株式譲渡後でも、買い手が経営効率化を目的としていれば、リストラや配置転換を進める可能性があります。
特にオーナー色が強い会社では、オーナー退任後にキーパーソン社員が退職することも珍しくありません。

3-3. 文化的ギャップ

異なる企業文化が融合できず、従業員が「居場所を失う」感覚を抱くこともあります。
その結果、自主退職が相次ぎ、戦力流出となるリスクもあります。

3-4. キャリア機会の拡大

 一方で、M&Aが従業員にとって新しいキャリアチャンスになることも事実です。

大企業グループの一員になることで、教育制度や昇進機会が広がる
新しい市場で活躍する場ができる
など、前向きな変化が生まれるケースも少なくありません。

 

4. 売却側が取るべき対応

 従業員の雇用をできるだけ守るためには、売却側経営者にも責任があります。

1.M&A条件に「従業員雇用の維持」を盛り込む
 → 契約書に雇用維持の条項を設けることで、一定の拘束力を持たせられます。

2.従業員情報を整理しておく
 → 雇用契約内容、勤続年数、スキルなどを整理し、買い手が適正に評価できるようにする。

3.買い手候補を見極める
 → 価格だけでなく、「従業員をどう扱うか」という方針を重視して選定する。

 

5. 従業員側が理解すべきこと

 従業員もまた、「守られて当然」と考えるだけではなく、次の視点を持つことが重要です。

M&Aは会社を存続させる手段であり、雇用を守るチャンスでもある
新しい制度や文化への適応は、個々人のキャリア形成にプラスに働く可能性がある
不安があれば、労働組合や弁護士、中小企業診断士などの専門家に相談する

 

6. まとめ

 M&A後の従業員雇用は、法律上は一定の保護が存在するものの、実務上は処遇変更や文化的摩擦などが発生し得ます。
 経営者は「従業員の雇用維持」を条件交渉の重要テーマとすべきですし、従業員自身も「変化を受け入れつつ、新しい環境でどうキャリアを築くか」を前向きに考える必要があります。

 M&Aは単に企業の所有者が変わるだけではなく、従業員一人ひとりの人生に直結する出来事です。だからこそ、法的保護と実務のギャップを理解し、丁寧な対応が欠かせません。

【ご注意】

・本稿は一般的な法制度や実務上の傾向を紹介したものであり、特定の案件に対する法的助言を行うものではありません。
・実際のM&Aにおける従業員雇用の取り扱いについては、必ず弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

・弊社ではM&Aセカンドオピニオンサービスも行っておりますのでお問合せ下さい。

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