後継者のいない会社を買う際の法務的チェックポイント
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はじめに:後継者不在が増加する中でのM&Aの重要性
日本の中小企業では、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。親族や社内に後継者がいない企業が増えるなか、M&Aによる第三者承継は事業継続の有力な解決策です。買い手にとっても、既存の事業基盤や顧客、ノウハウを獲得できる大きなチャンスとなります。
しかし「後継者不在の会社」は、その背景から法務リスクが潜んでいるケースも少なくありません。買収を成功させるには、財務だけでなく法務面のチェックを徹底することが不可欠です。
第1章:契約関係の確認
1. 取引先との契約書の有無と内容
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主力取引先との契約が口頭や覚書レベルで済まされていないか。
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長期契約や独占契約の条項に不利な条件がないか。
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キーマンである経営者個人に依存した契約ではないか。
2. リース契約・賃貸借契約のチェック
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工場や店舗の賃貸借契約が経営者個人名義ではないか。
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解約条項や更新条件にリスクがないか。
3. 知的財産権の帰属
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商標・特許・著作権などが会社名義で登録されているか。
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経営者個人や親族名義になっていないか。
第2章:労務関係の確認
1. 労働契約の整備状況
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就業規則や雇用契約書がきちんと作成・更新されているか。
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社員の労働条件が実態と乖離していないか。
2. 未払残業代や労務トラブルの有無
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勤怠管理が曖昧で、潜在的に未払賃金が発生していないか。
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労働基準監督署からの是正勧告履歴がないか。
3. 退職金・年金制度の確認
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規程が存在するか、積立不足がないか。
第3章:許認可・ライセンスの確認
後継者不在企業では、許認可が経営者個人名義になっているケースが少なくありません。
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建設業、飲食業、運輸業などは許可の「名義」や「更新条件」に注意。
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承継後に事業が継続できるかどうか、引継ぎ要件を事前に確認する必要があります。
第4章:会社組織・ガバナンス面の確認
1. 定款・株主構成
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株式譲渡制限の有無。
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親族や複数株主が絡んでおり、承継手続きが複雑化しないか。
2. 取締役・監査役の任期や登記状況
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登記事項が最新か、役員が実態通りか。
3. 社長個人と会社の分離度
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個人資産と会社資産が混同されていないか。
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個人保証や担保提供が残っていないか。
第5章:潜在的債務の有無
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保証債務(経営者個人が保証しているケースが多い)。
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訴訟・係争案件の有無。
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環境関連の負債(産廃処理、土壌汚染など)。
後継者が不在のまま経営を続けてきた企業では、整理が十分に行われていない場合があるため特に注意が必要です。
第6章:チェック体制と専門家の活用
法務的チェックは専門的知識が必要な領域です。実務では、M&A仲介会社やFAのサポートに加え、弁護士、公認会計士、司法書士などの専門家と連携しながらデューデリジェンスを行うのが一般的です。買収後に予期せぬリスクを抱え込まないためにも、外部の知見を活用することが不可欠です。
まとめ:法務チェックは「安心して引き継ぐための必須プロセス」
後継者のいない会社を買う場合、法務的なリスクは軽視できません。契約、労務、許認可、組織、潜在債務など多岐にわたる確認を徹底することで、買収後のトラブルを未然に防ぐことができます。
M&Aは「事業を引き継ぐ」だけでなく、「安心して未来を描ける基盤を整える」行為です。法務チェックを怠らず、着実な承継を実現することが、買い手・売り手・従業員すべてにとっての成功につながります。
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