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医療・介護分野における中小企業M&Aの進め方 ― 制度産業ならではの注意点と成功のポイント ―

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2026.01.22
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はじめに

日本は世界でも例を見ないスピードで高齢化が進んでおり、医療・介護分野は今後も社会的に不可欠な産業です。一方で、現場では人材不足、経営者の高齢化、制度対応の複雑化、収益構造の硬直化といった課題が山積しています。

特に中小規模の病院、診療所、介護事業所(訪問介護、通所介護、施設系サービス等)では、

・後継者がいない

・経営管理が属人化している

・制度改正への対応が難しい

といった理由から、事業継続そのものがリスクにさらされているケースも少なくありません。

こうした背景の中、医療・介護分野においてもM&Aは「例外的手段」ではなく、
地域医療・介護を守るための現実的な経営手法として活用が進みつつあります。


第1章 医療・介護分野におけるM&Aの特徴

1.1 制度産業であることの特殊性

 医療・介護分野の最大の特徴は、公的制度(診療報酬・介護報酬)に基づく事業である点です。
 そのため、一般企業のM&Aとは異なり、

・許認可・指定の承継可否

・運営法人の形態制限

・報酬算定要件の継続性

 といった制度的制約が、M&Aスキームの選択に大きく影響します。

 特に注意すべき点として、「株式を取得すれば自動的に事業が引き継げる」とは限らないという点が挙げられます。


1.2 M&Aが果たす社会的役割

医療・介護分野のM&Aは、単なる企業取引ではありません。

・地域住民の命・生活を支える

・雇用を守る

・医療・介護サービスの空白を防ぐ

という公共性の高い役割を担っています。

そのため、買い手・売り手双方に対して、「短期的な利益」ではなく「持続可能な運営」が強く求められます。


第2章 医療・介護M&Aが必要とされる背景

2.1 経営者・管理者の高齢化と後継者不足

 医療法人・社会福祉法人・中小介護事業者の多くで、

・理事長・院長が60代後半〜70代

・管理者が兼務状態
という状況が見られます。

親族や内部人材への承継が難しい場合、
M&Aは「廃業を避けるための選択肢」として現実味を帯びてきます。


2.2 人材不足と経営管理負担の増大

介護・医療分野では、慢性的な人材不足が続いています。
加えて、

・労務管理

・処遇改善加算への対応

・ICT導入

・法令・制度改正対応

など、経営管理の高度化が求められ、個人経営・小規模運営では限界が生じています。

M&Aにより、

・本部機能の共有

・採用・教育の集約

・システム統合

を行うことで、現場負担を軽減できる可能性があります。


第3章 医療・介護分野におけるM&Aの主な手法

3.1 株式譲渡(主に株式会社の場合)

介護事業のうち、株式会社が運営している事業所では、
株式譲渡によるM&Aが比較的多く見られます。

特徴

・法人格・指定が原則維持されやすい

・従業員の雇用継続性が高い

・契約関係を引き継ぎやすい

一方で、

・過去の運営リスク

・労務・請求関連の問題

も含めて引き継ぐため、慎重な調査が必要です。


3.2 事業譲渡(指定・許認可の再取得が必要な場合)

医療法人や社会福祉法人では、
事業譲渡が難しい、または制限されるケースも多くあります。

事業譲渡を行う場合には、

・新規指定・再指定の要否

・利用者・家族への説明

・従業員の再雇用手続き

など、実務的な調整が非常に重要になります。


3.3 法人合併・グループ化

医療法人同士、社会福祉法人同士では、
合併やグループ化によるM&Aが選択されることもあります。

【メリット】

・経営基盤の強化

・人材の流動化

・地域包括ケアとの親和性

【注意点】

・組織文化の違い

・ガバナンス設計

・理事・評議員構成の調整


第4章 M&Aプロセスの進め方(医療・介護特有の留意点)

4.1 目的整理と初期検討

最初に行うべきは、
「なぜM&Aを行うのか」という目的の明確化です。

例:

・地域医療・介護の継続

・人材確保

・経営安定化

・将来の成長基盤づくり

目的によって、適切な相手・スキームは大きく異なります。


4.2 相手先探索とマッチング

医療・介護分野では、

・同一エリア

・同一サービス種別

・理念・運営方針が近い法人

とのマッチングが特に重要です。

単に「規模が大きい」「資金力がある」だけで選ぶと、
現場や地域との摩擦が生じやすくなります。


4.3 デューデリジェンス(調査)のポイント

医療・介護M&Aでは、以下の観点が重要です。

・指定・許認可の状況

・報酬算定の適正性

・人員配置基準の遵守状況

・未収金・返戻リスク

・労務管理・離職率

・利用者構成と稼働率

特に、現場運営の実態把握が不可欠です。


第5章 M&A後の統合(PMI)で重視すべき点

5.1 現場の安心感を最優先にする

医療・介護の現場では、
「経営が変わること=不安」と直結しやすい傾向があります。

・雇用は守られるのか

・処遇は変わるのか

・利用者対応はどうなるのか

これらに対して、丁寧で一貫した説明が必要です。


5.2 利用者・家族・地域への配慮

医療・介護分野では、
利用者・家族・地域からの信頼が事業継続の前提です。

・サービス内容は基本的に維持

・突然の変更は避ける

・地域説明の機会を設ける

といった姿勢が、長期的な安定につながります。


5.3 経営と現場の役割分担

M&A後は、

・ 経営管理・制度対応 → 本部

・ ケア・医療の質 → 現場

という役割分担を明確にすることで、
現場の専門性を最大限に活かすことができます。


おわりに

医療・介護分野における中小企業M&Aは、
単なる「事業売買」ではなく、地域の医療・介護体制を未来につなぐ選択です。

制度の複雑さや現場の繊細さゆえに難易度は高いものの、
適切な準備と相手選び、そして丁寧な統合プロセスを踏めば、
M&Aは「事業継続」「雇用維持」「地域貢献」を同時に実現できる手段となります。

経営者が早い段階から選択肢としてM&Aを理解し、
主体的に検討を進めることが、医療・介護の未来を守る第一歩と言えるでしょう。


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