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家族内承継とM&A承継:どちらが中小企業に向いているのか?

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2025.06.20
  • コラム

はじめに:迫られる選択、中小企業の事業承継

 日本の中小企業は、多くが創業者またはその家族によって経営されており、長年「家族内承継」が主流でした。しかし、近年では後継者不在の問題や経営環境の変化により、「第三者承継型M&A」が現実的な選択肢として台頭してきています。

 経営者にとって、会社を誰に託すかは極めて重要な決断です。本稿では、家族内承継とM&A承継の両者の特徴、メリット・デメリットを比較し、中小企業にとってどちらがより適しているのかを多角的に検証します。

第1章:家族内承継の概要とメリット・デメリット

1. 家族内承継とは

 家族内承継とは、現経営者の子や配偶者、兄弟姉妹など、血縁関係のある人物に経営を引き継ぐ形態です。長らく日本企業において最も一般的な承継手段でした。

2. メリット

経営理念や企業文化の継承がしやすい
社員・取引先との信頼関係が維持されやすい
外部に企業情報が漏れにくい
比較的スムーズな経営権移行が可能

3. デメリット

後継者が経営に不向きな場合もある
相続・贈与税の負担が大きい
親子間での対立やプレッシャーが問題化することも
成長戦略が先代の路線に縛られがち

 

第2章:第三者承継(M&A)の概要とメリット・デメリット

1. M&A承継とは

 親族や従業員ではなく、外部の企業や個人、投資ファンドなどに事業を譲渡する方法です。近年では「第三者承継」として国や自治体も推奨する事例が増えています。

2. メリット

後継者不在でも企業継続が可能
企業価値を金銭化できるため、経営者の老後資金にも
外部の経営資源を取り込むことで成長戦略に繋がる
業界再編やシナジーを活かした統合が実現可能

3. デメリット

買い手とのマッチングに時間と手間がかかる
統合後の組織摩擦や文化の違いが問題になる可能性
取引先や従業員に不安を与える可能性がある
アドバイザー費用などのコストが発生

 

第3章:比較視点から見る「向き・不向き」

1. 経営者の価値観・理念の重視度

 経営者が理念や歴史を重視するタイプであれば、家族内承継の方がスムーズ。一方、経営の持続性や拡大を重視するならM&Aが選ばれやすい。

2. 後継者の有無と育成余力

 明確な後継者が存在し、その育成が可能であれば家族内承継が有効。ただし、後継者がいない、あるいは育成が難しい場合はM&Aが現実的。

3. 企業の財務状況と成長余地

 業績が安定している企業や成長分野にある企業は、M&A市場でも評価されやすく、高額売却も期待可能。反対に経営が不安定な企業は、社内承継の方が適しているケースも。

4. 従業員や取引先への影響

 家族内承継は、信頼関係を維持しやすいという点で安心感がありますが、M&Aの場合も適切なPMI(統合プロセス)を通じて安定化を図ることが可能です。

第4章:ハイブリッド型承継という選択肢

 近年では、家族内承継とM&Aを組み合わせる「ハイブリッド型承継」も増えています。たとえば、一部の事業は親族に継承し、別事業は外部に譲渡するケースや、親族と外部プロ経営者の共同経営体制をとるなど、多様な手法が模索されています。

 このように“全か無か”ではなく、柔軟に承継方法を組み合わせることで、自社の実情に合った最適解を導くことが可能になります。

おわりに:どちらを選ぶかではなく「どう準備するか」

 家族内承継とM&A承継は、それぞれに特性と利点があり、どちらが絶対的に優れているというものではありません。大切なのは、自社の状況と経営者の意志に合った選択を行うために、早期から選択肢を検討し、適切な準備を進めることです。

 事業承継は“終わり”ではなく、企業にとっての新たな“スタート”。そのスタートを成功させるために、経営者には冷静な判断と、未来への戦略的な視点が求められています。

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